「第9地区」感想文(ネタバレなし)

2009年/ニール・ブロムカンプ監督

出演:シャルト・コプリー ジェイソン・コープ 他

気楽に見れる★★★

お話が凝ってる★★★★★

映像がすごい★★★ 

 

特にずっと気になっていたタイトルとかではなかったのですが、たまたま先日遊んだbttnが先に見ていて「エイリアンのエビが可愛いよ」と言われたのを思い出し、自分も見てみました。エイリアンのエビってなんだよ…って思ってんですがエイリアンのエビでした。

どうでもいいですがbttnとは誕生日、血液、利き手、実家にある小皿の柄、そして面白いと思うツボが同じなのでたびたび「同位体」として扱われます。

 

アパルトヘイトをモチーフにしていたり、エイリアンと人間の対立を人種差別に見立てたりしているシリアスで政治的な映画…と見せかけて、どこかユニークで単純な面白さがあって、どちらかと言うとB級エンターテイメント映画として楽しめたな〜という印象でした。

 

もちろん、物語の下敷きとして、舞台となったヨハネスブルグの社会情勢や人種の対立というテーマがある以上、そういう政治的なものに関連したシーン・表現もありますが、自分はそれらに詳しく言及できるような教養もないので、深く考えずに見ていて面白かったところについての感想です。

 

 

 

▪️「侵略者」ではなく「難民」として描かれるエイリアン

南アフリカ共和国ヨハネスブルグに「難民」としてやってきたエイリアンと、人間によるエイリアンの管理・監視・抑圧をドキュメンタリー風に描きます。

 

主人公であるヴィカスは、エイリアンを管理する超国家機関「MNU」に所属していて、エイリアンの隔離地区である「第9地区」からの立ち退き要請のためにエイリアンの家を訪れます。

ところが、その際不注意によりエイリアンが所有していた謎の液体を浴びてしまい、液体の影響で徐々に体がエイリアンに変化していってしまいます。

ヴィカスは人体実験のためにMNUに追われることになり…というストーリー。

 

登場するエイリアンは地球を侵略しにきたわけではなく、高度な武器や強い力こそあるものの基本的には「難民」「弱者」として描かれるので、一般的な「侵略者」のエイリアンが登場する映画との設定のギャップが面白いと思います。

 

主人公ヴィカスと共に行動することになるエイリアン「クリストファー・ジョンソン(地球名)」は理知的で人間的な部分もありますが、他のエイリアンはどこかとぼけていてユーモラスな動きも多いです。

 

作中では、人間は蔑称としてエイリアンのことを「エビ」と呼んでいますが、なんとなく愛称というかニックネームとして「エビ」という呼び名が可愛くて似合うような…という気もします。

 

エイリアンのこのユーモアのあるキャラクター性(と、ヴィカスの小者っぷり)が、映画全体の深刻さを少し和らげて、エンターテイメントとして面白く楽しめる要素になっているのかなと思います。

 

 

▪️ドキュメンタリー風映像の面白さ

映画全体を通して、冒頭のヴィカスがカメラに向かって喋っているようなシーンや、専門家がインタビューに答え解説や見解を述べるドキュメンタリー番組風の映像と、劇中の出来事としてヴィカスの身に起こっていることの映像が曖昧な境界で描かれる構成です。

 

映画と直接関係ない話なんですが、私のすごく好きなビデオドラマに「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズというタイトルがあります。

コワすぎ!の監督である白石晃士監督の得意な手法がフェイクドキュメンタリーで、コワすぎ!をきっかけに同監督の映画をいくつか見て以来、ドキュメンタリー風の映画ってなんか面白いな、と思っていました。

 

フェイクドキュメンタリーにすることで、劇中で起こっていることがそのまま劇中で第三者視点として描かれます。感情移入するのとはまた違う見方になったり、かえってリアルに感じたり。

逆にあまりにも内容がフェイクであると分かるが故に、虚構とドキュメンタリーというギャップがどこか滑稽に感じられてシリアスな画面なのに笑えたり…。

 

第9地区で言えば、SFと言う現実離れしたものを描くジャンルなのも相まって、ただ物語を見るのとは違う面白さがあるな〜と思います。

 

 

▪️まとめ

エイリアンや主人公のキャラクター性、設定のおもしろさもあり、アクションやバイオレンスなシーンのハラハラ感もあり、お話の面白さもありなエンターテイメント映画です。

エビかわいい。