海洋散骨葬をした時の思い出話

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私には祖父の記憶があまりありません。

 

母方の祖父は母が幼い頃に離婚していて、小さい時に何度か会ったことはあるものの物心ついた頃には音信不通に近い状態でした。北海道を離れて、青森に住んでいるらしい、ということだけ知っていました。

 

父方の祖父は私が生まれる前に他界していたので、会ったことがありません。

 

母も父も自分の親の話は(好意的な思い出話なんかは特に)あまりしない性質で、親戚付き合いもとても少なかったこともあり、「自分の祖父がどんなひとだったのか、ひいては「祖父」という概念がどういうものなのか、今でもよく分かりません。

 

 

 

まだ私が実家にいた頃のある日、外国語の電話が来ました。

 

語学なんて全く学んだことの無い母が日本語で受け答えをしたあとに電話を切ったかと思うと、

「青森のじいちゃんが危篤なんだって」と言いました。

 

そう、電話は外国人からではなく、祖父が入院している青森の病院からだったのですが

私の耳にとって、津軽弁は完全に外国語でした…。

(母も札幌出身ですが、父の転勤で数年津軽圏に住んでいたことがあるので津軽弁もそれなりに聞き取れるそうです。私はその頃まだ幼稚園に入るより小さかったのでほとんど何も覚えていません…)

 

祖父は再婚もしておらず、身寄りがない状態に近かったので母に連絡が来た、というようなかたちでした。入院生活の面倒は、祖父が親しくしている女性がしていたようでした。

 

 

祖父がいつ亡くなってもおかしくない状態はしばらく続きました。

家族が留守のときに一度青森からの電話を受けたのですが、いかんせんなんと言っているのかわからず「青森から電話が来たけど誰だったのか何の話だったのか全くわからん…」というどうしようもない取次ぎをしてしまったこともありました。普段会社で電話の取次ぎをしているのですがこんな対応をしたらクビになるのではと思います。家をクビにならなくてよかったです。

 

母はこの間何度か青森に足を運んだのですが、旅行をほとんどしたことのない母は、荷物やチケット手配でひどく苦労していました。(チケットは結局ほとんど父が手配していたと思います。)

ある日青森に行っている母からLINEで連絡があり、いよいよ祖父は亡くなったのだろうか、と思って開いてみれば「メリープ捕まえたよ」…

どんな状況でも絶対にポケモンを探すことをやめない母を見て、鉄のゲーマーだな…などと思ったりしたのでした。

 

さて、いざ亡くなった時のお葬式はどうしよう、お墓はどうするべきなのか、という問題は我が家にしばらくい続けました。

祖父の希望は「海に骨を撒いてくれ」とのことでした。

 

 

夏の少し前、祖父は青森の病院で亡くなりました。祖父の希望通りに海洋散骨葬が行われることになり、青森から札幌へやってきた、私が数十年ぶりに再会した祖父は、骨壷に小さく小さくなっていました。

 

 

7月30日、夏の真ん中の日に小樽の海で海洋散骨葬を行いました。家族4人と業者の方との小さなお葬式です。

その日はすごく天気が良くて、海に来るにはいい日和だねなんて言い合っていました。

 

業者の方のクルージングボートに乗って散骨を行ってもいい近くの海域まで出るのですが、私は船に乗るのは20年振りに近く、しかも当時激しい船酔いに襲われた記憶があったので、酔い止めを飲んで出発しました。

船の部屋から出て海を見ても大丈夫ですよ、と業者の方に言われたのですがそれでもどうしても三半規管が弱く、やや病み上がりだったこともあり「吐き気はないけど脳が酔っていると言っている…波で飛ばされそう…」と移動中はほぼずっと座り込んでいました…。

 

15分ほど進むと「着きました」とのことで、外に出て式が始まりました。

業者の方に短いお経を上げていただき、お酒とお花を海に投げ、家族それぞれで散骨します。

式のあいだ船は一定箇所をグルグルと回っているのですが、そのことに気付かず「さっき投げたお花が戻ってきた…」と言って笑われました。お花が戻ってきたのではなく私たちが戻ってきているだけでした。

 

少し暑いくらいの爽やかな晴れで海も真っ青で、遠くに見える小樽の街はいつもと違う角度で不思議な気分でした。

 

我が家は少し「家族・親族の結び付き」のような概念が薄い家庭なんじゃないだろうか、と感じることがあります。それぞれがそれぞれで生きています。悪いこととは思わないです。

そんな私にとって、海洋散骨葬はなんだか今までで1番「しっくりくる」お別れだったかもしれないな、とか思ったのでした。きっとこれから経験する中でも1番きらきら綺麗で笑い合ってお別れをするお葬式なんじゃないかなあ、と思っています。

 

帰りは船の先頭に座らせてもらいました。揺れが少なく感じられて1番居心地が良かったです。

 

 

おしまい。

 

 

余談ですが、帰ってからも体の揺れが収まらずにその日は眠れないくらい船酔いしてしまったので、もう船には乗りたくないです、、、。