尊敬している人の話(すごくどうでもいい雑談)

先日…というか、もう昨年の話ですが、前の勤め先でお世話になっていた上司のおじさんに久しぶりに会いました。
だいたい二年振りくらいです。相変わらず元気そうで安心しました。

今日はこの元上司のおじさんの話を書こうと思います。

 便宜上「元上司のおじさん」なんて呼称になっていますが、彼は私がこれまで出会ってきた人々の中でおそらく一番に頭の良い方で、それでいて面白くて、素敵な人間味に溢れた方で、私はそんな彼のことをとてもとても尊敬しています。

更に端的で卑屈で俗っぽい説明をすると、「私レベルの人間が普通に生きていてもまず交わることは無かったであろう上流階級の人」です。
良い大学を出ていて、大手企業に長年勤めていて、仕事で活躍していて、家庭があって子どもがいて自分の家があって、聡明で面白くて親切な人。
人生の中でつまずいたこと無さそうだな…と思わずには居られない、「勝ち組」の人。
「こんな人本当にいるんだなあ」とずっと思っているし、「なぜこんな人が今でも私と交流を持ってくれるんだろう…」とも思います。面白いかららしいです。
(お互いに今は前の勤め先とは違う場所で働いていますが、実は現在妹が彼の元でお世話になっているので、全くの無関係な他人になっているわけでもないのですが…)


私は卑屈で学歴コンプレックスのかたまりで常に余裕のない一般平凡会社員なので、大抵の場合「勝ち組」みたいな人のことは無条件で気に入らないのですが(最悪すぎる)
元上司と話すのはとても楽しいし、むしろ「私みたいな人間のことを今も気にかけてくれるなんて、幸運なことだ」とすら思います。
元上司は私の親くらい年が離れているのでそういう部分ももちろんあるでしょうが、大部分はやはり彼の人間性の優れている証拠だと思います。


私の前の勤め先は地元の大手企業でした。
ただし、有期雇用、臨時員扱いの非正社員です。(正社員だったら多分今でも辞めないでそこにいます。笑)

前の勤め先に入社する前、私は1年間職に就いていませんでした。それより以前はDTPや印刷関係の専門職で仕事をしていたのですが、心身の負担が大きく体を壊してしまったので休養の期間を取っていたのです。

専門職を続ける自信がなかったこと、病み上がりなのでパートタイムや有期雇用などの働き方で少しずつ社会復帰しようと考えたこと、また専門職以外の経験がないので履歴書に「一般職の職務経歴」を書けるようにして次に繋げたかったこと…
これらを総合していくつかの非正規雇用の求人にエントリーし、一次審査の書類が唯一通ったのが前の勤め先でした。

私の履歴書を見て「この子うちにちょうだい」と担当人事に根回しをして拾い上げてくれたのが元上司です。本来彼は人事に口出しできる部署の所属ではないのですが、「融通が効く」ように常日頃から担当者と普段から交流し、またあるときは(出張のお土産のチョコレートなどの)賄賂を渡すなどしていたらしいです。
そういうことをいろいろな関係性の人に嫌味なく出来る人でした。多分私もその一部だった(おそらく今も)なんだと思います。

ちなみに一般職未経験、ブランク有の私をなぜ「欲しい」と思ったのかというと、あるプロジェクトのためにパワーポイントで作図が出来る人が欲しかったから、だそうです。
デザイン関係の専門学校を出てDTPで仕事をしていたのなら多分いけるだろうと。
正直当時の私はパワーポイントは触ったことはなかったのですが、まあなんとかなるだろうと面接では少し見栄を張り、無事そのまま入社の流れになりました。

専門職で体を壊したときは正直「専門職なんかやるんじゃなかった、最初から一般職を目指すべきだった」と落ち込んでいたのですが、この経験があったからこそ非正規とはいえ少しの間大手企業で仕事ができたこと、元上司と出会えたこと、今の職場に入ることに繋がったことなど、結果的にたくさんのことに活きたので今は決して無駄ではなかったと思います。


正直、再就職先を探し始めた頃は非正規雇用の求人なら正規雇用の求人より採用してもらえる可能性が高いかなという考えもあったのですが、未経験だと本当に書類が通らなくて…
そんな中私を見つけてくれた元上司には感謝してもしきれません。
前の勤め先で働いていた期間はとても楽しく、非正社員にも関わらず大手企業ならではの規模の大きな仕事などにもいくつか関わらせてもらったり、とても充実したものになりました。
元上司は雑談が好きで、仕事に関係する少し専門的な話から好きなアイドルの話、出張先の美味しい個人経営の店の話など、いろいろな話をしてくれました。
専門的な話に関しては私は分かったり分からなかったりで、「分からなかったです」と言うと「でしょうねえ。私もよく分かりません」と笑っていました。
また、たまにお土産のお菓子をくれて私に感想を強請っては、味の違いの分からない私の「よくわかんないけど美味しいです」という言葉を聞いて満足そうにしていました。
「そっけない感じがなんかいい」らしいです。


本当に楽しい職場でしたが、勤めている途中で家を出たこともあり、金銭面やこれからのことを考えて正社員として仕事をするため、私は別の会社に行くことにしました。
偶然にも、元上司もほぼ同じタイミングでその大手企業を去ることになりました。
いわゆる「ヘッドハンティング」というやつだったと思うのですが、スカウト先の企業は比較的遠距離の転居を伴う場所にありました。
諸々の条件や転居に伴う必要なこと、自分や家族のライフプランをどうやって変更あるいは維持するか、そしてどちらの方がより面白い仕事が出来るか…それらを冷静に、賢明に、けれどもけっこう軽いノリで判断して転職する結論を出した元上司のことを、私は本当に本当にすごいと思います。こういうところがまた「レベルの高い人だ」と思わずにいられないのです。

人生においてきっと重要なターニングポイントになるであろう大きな判断を冷静かつ軽快にできるということ、そして仕事に対して前向きで、仕事で何を成すかということが人生に組み込まれていること。間違いなく今まで見てきた社会人の中で、一番に理想的で、聡明な人です。
仕事に対する姿勢も、「好きな分野の仕事をしている」というよりは「自分がするべき仕事が面白くなるように工夫したり視点を変えたり、常に機会を伺って行動している」と言う方が正しいように感じます。この「仕事に対する前向きさ」も私はとても良いなと思っていて、できれば私もそういう人になりたいです。

補足しておきますが、この元上司は仕事人間では全然なくて(むしろ、めんどくさいな~帰っていい?とか言いがちなタイプ)家族を大切にしそれなりの趣味もある、プライベートをとても大事にしている人です。そういう部分もなんだかとても「正しい人だな」と感じます。


元上司に会うたびに、こういう聡明な人と並んでずっと仕事が出来るくらい自分も賢ければよかったのに、とまた少し卑屈に思ってしまいます。
それでも、そんな風に思える人と少しの間でも一緒に仕事ができたこと、仕事の繋がりがなくなった今でもたまに会ってもらえるような、気にかけてもらえる関係でいられること、たくさんの人と交流のある元上司に「矢澤さんは今まであんまり周りにはいないタイプで面白いんだよなあ」と言ってもらえたこと、これだけでも私の人生にとってとても大きなことなんじゃないかなあ、と、思ったりもするのでした。

おわり。