「A GHOST STORY」感想文(ネタバレなし)

2017年/デヴィッド・ロウリー監督
出演:ケイシー•アフレック、ルーニー・マーラ
気楽に見れる★★
お話が凝ってる★★★★
映像がすごい★★★★★★
音楽が良い★★

 

みなさんこんにちは!やぁたろです。

今回はTwitterでもちょっと話題になっていた「A GHOST STORY」の感想です。
ビジュアルはインパクトあるけどどうなんだろ〜?とか思ってたら完全にヤバい映画でした!!!またえらいもんを見てしまった…。

 

 
■なんやかんやほっこり泣ける系だろ〜と思いきや…
不慮の事故で死んでしまった夫が、シーツを被った少し古風な雰囲気の幽霊になり、元いた家に戻ってきてしまう…というストーリー。
あらすじや「美しくもせつない愛の物語」なんかの煽りから、「きっと奥さんの目には幽霊の夫の姿は目に映らないけど、夫の気配を感じつつもすれ違いながら暮らしていって、最後には妻の再婚を見守りながら成仏して終わるみたいな王道泣ける系なんやろ〜???」なんて思ってたんですがそんなチャチなモンじゃ断 じ て ね え。一人の男の幽霊が世界の始まりから終わりまでを追想しながらループして、再生しすぎたテープがいつかは擦り切れるような、胎児の夢のような…、、、訓練を受けていないと「???」で終わるサブカルクソオタク向けの構成です。なんじゃこりゃすごいな。間から構成からメジャーを一切合切捨ててます。
後述しますが、この映画ストーリーがメインディッシュではないよね〜と思いつつも、見終わったあとに回想していくとなかなかどうしてとんでもないインパクトが残ります…。ただやっぱりある程度訓練を受けていないと「???」かも。
 
■監督の美意識に無限に殴られ続ける映画
「シーツをかぶった幽霊」という特徴的なビジュアルで、公開前に少し話題になっていた本作。本編もとにかくビジュアルに対するこだわりがエグい!ていうかもはや怖い!!監督は変態なのでは??ホラーじゃないのに本当に怖くなりました。
まず間の取り方が尋常じゃない。普通なら半分くらいの尺のところを倍取ってます。とにかくこの構図の美しさを見ろ!見ろ!!もっと見ろ!!!もういいです!!!見ろ!!!!こんな感じ。
動画としてのモーションより1カット1カットの構図に力が入っているような印象なので、ちょっと紙芝居的に感じるところもあるかも。ただ本当〜〜〜に全カット一切の妥協がありません。構図、陰影、セットの小物の配置、幽霊のシーツのドレープやディテール、そしてシーツの向こうにいる死んだ男の透け感…全てに隙がない。シーツに穴が空いているだけの幽霊の表情までも切り取っている。ここまでこだわった映像を延々90分見せられるの、執念!!!って感じでこわくないですか?こわかったです。
 
それから個人的に印象に残ったのが、これまた尺が異常に長いのですが、夫が亡くなった直後、平日の昼下がりに薄暗い家の中で妻が1人でパイを食べるシーン。自分一人が悲しみと絶望にいる中、世界は、社会は当たり前のように動いている。やたら天気のいい外と、陽のあまり入らない一人ぼっちの家。外から聞こえてくる平和な人々の声が、また自分の孤独を際立たせる。この「平日の昼間の孤独」は、経験ある人しかわかんないんじゃないかなあ…と思うのです。監督はそれを知ってるんでしょうね。このシーンで私はめちゃくちゃ泣いてしまいました。
 
この映画の見どころは間違いなく構図です。ここには監督の美意識しかありません。とんでもない映画でした。
 
■まとめ
メジャーシーン向けって感じではないので見る人を選ぶとは思いますが個人的にはめちゃくちゃヤバい一本でした。おすすめです。
 
ではまた!