「リズと青い鳥」感想文(ネタバレなし)

2018年/山田尚子監督

声の出演:種崎敦美 東山奈央 他

気楽に見れる★★★★

お話が凝ってる★★★★

映像がすごい★★★★★

音楽が良い★★★★★

 

またまたお久しぶりの映画の感想です。

自分は基本的に予告で気になった映画はあまり事前に情報収集せずに見に行くので、「リズと青い鳥」も「響け!ユーフォニアム」というアニメのスピンオフだということを見る直前まで知りませんでした…。
高校や学生が主体のアニメが好きなので軽い気持ちで見に行ったのですが想像以上に良かったです。私みたいに「ユーフォニアム」を知らなくても単体の映画として充分楽しめます。個人的には「やがて君になる(漫画)」とかが好きな人にかなりオススメです。
 
 

 

 
▪️綺麗で繊細な映画
リズと青い鳥」は吹奏楽部の3年生、みぞれと希美の二人の女の子のお話ですが、劇中はひたすらに感情の揺れやすれ違いを丁寧に描いていて、物語自体の起伏はほとんどありません。物語自体の展開に起伏や意外性を求める人は、少し退屈かもしれないです。
ただ自分は、「そういえばこの話にはイベント的な起伏がないんだ」ということに見終わってから気付いたくらいにこの映画に引き込まれました。衝撃的なシーンやセリフがあったり、泣いたり、叫んだりするシーンもないのにこんなに「感情の動きの表現」を徹底して物語に引き込んでくる映画は珍しい気がします。
 
高校3年生で部活、そして吹奏楽部といえば、話の見せ場としてコンクールとか、進路とか、卒業式とか、そういったイベントを物語のクライマックスに持ってくるのが一般的だと思います。「リズと青い鳥」にもこれらの要素が少しだけ出てくるのですが、あくまでもそれはみぞれと希美が過ごしていく時の流れの中にあるいくつかの出来事に過ぎず、この映画が描いているのは二人の細かな関係性や感情の動き、ただそれだけです。
ただもうこれが本当に綺麗で細やかで文学的で、アニメに詳しくない私でも監督天才か…?ってなってしまうほどに切実で美しい。
作画の繊細さもさすがの大手アニメーション制作会社というところです。アニメに詳しくない私でもさすがに京都アニメーションという名前は知っています。
音響も吹奏楽部の音をかなり意識しているなというのが感じられて、久々に絶対に映画館で見て正解だったな〜と思うアニメ映画でした。
 
 
▪️微妙な関係性をひたすらにひたむきに描く
少しコミュニケーションが苦手なみぞれにとって希美はすごくすごく大切な友達で世界の全てで、でも明るくて社交的な希美にはほかの世界がたくさんあって…
みぞれが希美に対して抱えている思いはきっと友達以上のなにかで、でもそれを恋愛感情の一言で片付けてしまうにはあまりにも野暮、そんな繊細でもどかしい気持ちを、丁寧に丁寧に2時間かけて表現している作品でした。
自分は友達より恋人より大切にしている同性の親友みたいなシチュエーションがめちゃくちゃ心に刺さるので本当に涙が止まらなかったです…。
 
このお話の主人公のみぞれは無口でちょっと「不思議ちゃん」な雰囲気ですが、部活のメンバーと対等に接しているし、登場人物同士で意見がぶつかることがあってもそれは悪口や陰口ではなく、あくまで対等な意見であるというのが徹底されているのも嫌な気分にならずに見ることが出来るポイントだと思います。
それぞれ心に自分の気持ちを抱えていて時にぶつかったりすれ違ったりしても、「嫌な子」はいないのです。私はあんまり「嫌な奴」がメインメンバーにいるお話が好きじゃないので…笑(これ前も書いたかも)
 
 
 
▪️まとめ
女の子がたくさん出てくるアニメの定番であるポップさみたいなものがほとんどなくて異色な作品なんじゃないかな?と思いますが私的にはすごく好きな映画です!いいもの見ました。
私と好みが近そうな方は(?)ぜひ見てみてください〜。ではまた。