「ウィーアーリトルゾンビーズ」感想文(ネタバレなし)

2019年/長久允監督
出演:二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナなど
気楽に見れる★★★
お話が凝ってる★★★★
映像がすごい★★★
音楽がいい★★★
 

こんにちは〜!

今回は「ウィーアーリトルゾンビーズ」の感想文。ミニシアター系の映画で若干クセが強いんですが、自分はなかなか好みでした。
 
 

 ■現代的なサブカル映画

斎場で偶然知り合った4人の少年少女は、みんな「両親が死んだ、それなのに泣けなかった」という共通点をもっていた。
自分たちを「感情が死んでいるのに生きているゾンビ」に喩え、ゾンビだから何をしても良いと開き直り、家出を決行する。
ゴミ捨て場の片隅でバンドを結成した4人は、その演奏がネットで話題になりたちまちデビュー、社会現象に。思いもよらない展開に、子供たちは翻弄されていく…
 
すごーくサブカルみが強い映画だと思います(笑)突拍子もなかったり、やや現実的ではない細かいことを削ぎ落とした展開がこう、ビレバンに積んである漫画でこういうのみたことある気がする…みたいな…(?)
余計なものを排除してテンポよく突飛なストーリー展開をしていく、という点に関して、現実的なストーリーを求める人には「そんなうまく行くわけないじゃん」となってしまいそうな気がするので、その辺好みが分かれるかなあと。細かいことを気にせずフィクションをフィクションとしてシンプルに楽しめる人は違和感ないと思います。
いろいろ尖ってる映画なんですが、特に一番特徴的なのが台詞回しだと思います。「エモいって古くね?ダサっ」とか、「大人はバカだから高い金払って深呼吸してんの」とか…(細部違うかも、すみません)印象的なセリフが多くて、音としてのリズム感もかなりこだわっているなと思いました。
あとこれ完全にわざとやってるんですけど、主人公の少年少女たち4人全員、徹底的に棒読みなんですね。全力で感情の死んだゾンビ。これもなかなかパンチ効いてます。
画面作りも良い意味でサブカルチャーっぽいというか、ビビッドな色のネオンだったり、バンド「リトルゾンビーズ」のごちゃっとした衣装だったり、随所に挟まれる、彼らの冒険みたいな生き方をゲームに喩えたドットの画面だったり。ドット画面なんかはファミコン風でどちらかと言えば「懐かしい」の部類なんですけど、そういうのを視覚表現に取り入れてくるのがすごく現代的だなーと思います。ロードットは見た目も可愛くてファッション的な面でも流行りっぽかったりしますね。
前述した通り好みの分かれるストーリーなんですが、「死んでいるように生きてんじゃねーよ」とか、「搾取・消費されるポップカルチャー」とか、「暴走するSNSの『警察気取り』の人たち」とか…これまた現代的なテーマがわりとぎっしり詰め込まれてます。それらを見下してやっぱり大人も世界もくだらねーと吐き捨てる主人公の少年少女たちに、共感もあればああ自分も下らない世の中の一部かもしれないと自戒する部分もあるかも。画面やセリフのテンポはポップで明るめなんですけど、全体通して展開は比較的居心地悪いです(笑)そこがまたサブカルっぽい〜。
自らをゾンビだと自称する主人公たち4人ですが、「感情が死んでいる」というよりはみんなそれぞれ事情や生きづらさがあって自らを抑圧している…という感じ。彼らが抱える事情の中にはやっぱりやや現実的でないものもあるけれど、本質的にはどこか共感できるような気もします。
何か答えを提示するタイプの映画ではないけれど、考えさせられるテーマ、情報量は多いです。
 
■まとめ
今年はあんまりミニシアター系見てないのもあるかもしれないんですけど、尖ってましたね…!意外と映画はまだこういうテイストのものって少ないような気がします。これから出てくるかも。
ジャンルはちょっと違うんですが「おやすみプンプン」とかその辺の漫画が好きな人は割と好きなんじゃないかなという気がします。
ではまた!