「シライサン」感想文

2020年/安達寛高監督
出演:飯豊まりえ、稲葉友など
気楽に見れる★★★
お話が凝ってる★★★★★
映像がすごい★★
こわい★★★★
 

こんにちはやぁたろです!

今回は小説家として活躍している乙一(安達 寛高)が脚本、監督を務めるジャパニーズホラー「シライサン」の感想文です!
ホラー苦手なんですが(説得力ゼロ)学生の頃に乙一の小説を読み漁っていた自分としてはやはりチェックせざるを得ない…!ということで「小説版 シライサン」とセットで挑みました。普通に怖かったんですけど、怖さ以上の乙一の表現の世界の底知れなさを体験できましたので後悔はしておりません。ていうか大満足です。
今回の感想文は微ネタバレを含みます!ごめんなさい!なんの前知識もない状態で「シライサン」に挑む予定のある方は、見てから読んでください…(笑)よろしくお願いします。
 

 ■「ホラー」というカテゴリを超えたギミックの妙

親友、香菜を突然目の前で失ってしまった主人公の瑞紀。香菜は死ぬ直前、見えない何かに怯え、眼球を破裂させて亡くなった。
一方、香菜と同じような奇妙な死に方で弟を失った春男は、弟の死の真相を探ろうとして瑞紀と知り合いになる。やがて、同じ時期に同じように死んだ二人は実はバイト先の同僚同士で、もう一名の同僚を加えた3人で温泉旅行に行っていたことが判明する。
その旅行先の温泉地で聞いた「怖い話」が原因ではないかという説が浮かび上がるのだが、瑞紀、春男の二人も同じく「怖い話」の全文を知ってしまい、恐怖の連鎖に巻き込まれていくことに…
 
 
小説も映画も、まず第一に純粋なジャパニーズホラーコンテンツとしての仕上がりがかなり良くて、普通に怖いです…笑
小説が怖くて面白いのはもう大活躍されてる作家さんなので言わずもがななのですが、映画も構図やテンポ感、空気の演出がうまい…!多才すぎる。シーンが切り替わる直前、少し間延びした空白の取り方が「何かあるんじゃないか」というドキドキを生むんだよなあとひしひしと感じながら終始怖がってました。笑
単体で見てもしっかり怖くて、呪いの対処法とかオチなんかは小説っぽい意外さもあるのでひとつの映画として十分楽しめるのですが、「シライサン」という物語の真価が最大限に発揮されるのはやはり小説版と合わさってからでしょう。どちらも見てそのギミックの作り込みの深さに愕然としました…。
小説版の方が描写が細かいので順番としては先に小説がいいのかな?と思います。詳細なネタバレは伏せたいのでざっくりとした書き方になりますが、作中に登場してメインの怪奇となる「シライサン」の呪いは、「シライサン怪談」を聞いてしまった人が同じように呪われていくという伝染式であること(つまり私たち読者、視聴者も巻き込まれるということ)、小説版も映画版も作者、監督は同じく乙一であるのに、わざと細部の設定や展開を変えて「シライサンにまつわる別の物語」であることを強調していること、シライサンは呪われている複数人の人々に対して同時に出現出来ず、怪談を知っている人の元へランダムで現れること…
この辺りを活かした「現実とフィクションの境目を曖昧にする恐怖の演出」が本当に上手いんです。作中ではシライサンも「死の概念」のような存在であり、生死の世界の境界を曖昧にしてしまうのですがやってることがほとんどそれと変わらないじゃないかという…。ギミックに気付いてハッとしつつも考察の余地も残されていて、考えれば考えるほど深みにハマる。ちょっとした単発ホラータイトルに思えていた「シライサン」の世界が、実はびっくりするほど深く作り込まれていて、現実のすぐそこに寄り添ってくる。度肝抜かれました、間違いなく傑作です。
ホラーという要素を超えてギミックの見事さがあるのでいろんな人に体験して欲しいなあと思うのですが、如何せん再三申しております通り普通にホラーなので普通に怖いのが難点なんですよね…(笑)
急な大きい音なんかでビックリさせてくるような、ジェットコースター的なホラーとは違うジャンルなので心臓への負荷はそれほどないと思います笑 グロとか不気味なビジュアルに対する耐性がそれなりにあれば楽しめるかと。私はグロ苦手なのでややしんどかったです…笑 でも見てよかった。
 
 
■まとめ
乙一、本当にストーリーテーリング、演出の天才なんですよね。その媒体でしかできない表現方法、というのをやっている作家だよなあと昔から思ってます。期待を上回る衝撃だったので大満足です。
今回はこんな感じで〜!ではまた。